タイ王国のコーヒーを飲んだのは、スターバックスで勤務を始めて1年以上が経過してからのこと。
期間限定で販売されたムアンジャイブレンドというコーヒー豆にタイとインドネシアの豆がブレンドされていた。

タイでコーヒー豆って取れるの?と思い飲んでみると、インドネシアの深いコクに対して、後味をすっきりとさせるタイのコーヒーが感じられる、今までのアジア豆の特徴とは違うコーヒーだった。

実のところ、インドネシアのコーヒー豆はスターバックスでもEarthyというキーワードで表現する「大地のような」風味を感じるコーヒーがあり、その風味が苦手だった。それがこのブレンドでは初めて美味しいと感じた。

それ以後、滅多に目にすることのなかったタイのコーヒーと再び出会ったのが、アボンゾ農園のコーヒー豆。
友人が焙煎所を構えていた静岡まで行った時、アボンゾ農園のことを初めて知った。
友人たちの焙煎所は、農園やウォッシングステーション(加工場)、協同組合など直接知人のいる産地としか取引をしていないユニークな焙煎所だった。(現在は東京都内に移転)

そのため、まだまだ世間では取り扱いの少ないタイのコーヒーを焙煎していた。
しかも、ウォッシュド(水洗式)、ナチュラル(乾燥式)、ハニープロセスの3種類の精製法(加工法)の豆の取り扱いがあるという、当時としてはかなり珍しいラインナップ。

日本国内ではウォッシュドの豆が主流のコーヒーで、中南米やアフリカが原産国の場合に多く、アジア・太平洋の産地でも一部取り入れられている、というコーヒーと言えばウォッシュド、というほど多くの地域で採用されている精製法。
大量の水が必要で、まだまだコーヒー豆の生産が少ない地域に、それほどの加工場があるというのを想像できなかったため、驚いたのを覚えている。

ナチュラルとは、熟したコーヒーチェリー(実)ごと天日干しをし、ほどよくチェリーが乾燥したところで、豆を取り出す加工法で、当時はエチオピアやブラジル等の一部地域で取り入れられていた加工法。
それをタイでも採用している、ということに更なる驚きがあった。

ハニープロセスは当時スターバックスでも高級豆ラインナップの豆でブラジルの豆を取り扱った時以外目にすることもなかった、加工法。
そんな新しい加工法までこのタイの農園は取り組んでいると知り、3種類とも購入し自宅で飲み比べをした。

今でもタイの豆はそれほど流通していないのが現状。
アボンゾ農園のコーヒーを福豆コーヒーさんが取り扱っているということで、特にアボンゾナチュラルのコーヒー豆を好んで飲んでいる。

中煎り〜深煎りで焙煎された豆が特におススメの焙煎度合い。

アボンゾ農園のコーヒーは深煎りにするとコクが強めのコーヒーに仕上がることが多く、食事などと一緒に飲むのに適している。
特に、コクのある食材との組み合わせがおすすめで、チーズを使ったスイーツやクリームベースの食事、乳脂肪の高めのミルクなどとの相性が抜群に良い。

タイでも様々な農園でコーヒー豆が生産されるようになっており、新しい技術の加工法も取り入れられている。
これからどんなコーヒー豆ができるのか、その味わいを知る日が待ち遠しい。

投稿者プロフィール

中島靖代
中島靖代コーヒーライター
某大手コーヒーチェーンにて、9年間バリスタを経験。
コーヒーセミナーをはじめ、アルバイト教育も実施。コーヒーと言えばエチオピアというほど、エチオピアコーヒーを愛してやまないコーヒー愛飲家。